カバードコールとキャッシュセキュアードプットの違いと選び方|担保・最大損失・割当時の行動を数値で比較
同一銘柄・同一行使価格・同一満期なら、カバードコールとキャッシュセキュアードプットの損益曲線はほぼ等価である。違いは担保(株か現金か)であり、100株を保有済みなら前者、まだ持たず買いたい価格があるなら後者が対応する。
カバードコールとキャッシュセキュアードプットは何が違うのか?
違いはペイオフではなく担保である。オプション理論の一般的な関係(プット・コール・パリティ)として知られるとおり、同一銘柄・同一権利行使価格・同一満期であれば、現物100株にコール1枚を売るカバードコールと、現金を確保してプット1枚を売るキャッシュセキュアードプットは、ほぼ同じ形の損益曲線になる。上方は受け取ったプレミアムで頭打ち、下方は株価下落をプレミアム分だけ緩和した傾きで伸びる。
したがって「どちらが儲かるか」という問いは、立て方そのものが誤っている。答えが分岐するのは次の三点だけである。
- いま対象株を100株持っているか。 持っているならコール売りは追加現金を要さない。
- 割当(行使)を受け入れる現金を満期まで拘束できるか。 行使価格50ドルなら1契約で5,000ドル規模である。
- 割当が起きた後の行動を、発注前に文章で書けるか。 書けないなら、それはまだ戦略ではない。
この三点に答えられれば、選択はほぼ自動的に決まる。逆に言えば、二つの戦略を比較して迷っている状態は、多くの場合「在庫と現金の棚卸しが終わっていない」だけである。
カバードコール(現物100株+コール売り)
- 保有株の配当と議決権を維持したままプレミアムを受け取れる
- すでに保有する100株をそのまま担保に使え、追加現金が不要である
- 出口が「行使価格での売却」に固定されるため、利益確定の規律を作りやすい
- 上昇余地は行使価格で切られる。急騰局面の値上がり益は放棄になる
- 株価下落による含み損は残り、緩和されるのはプレミアム分だけである
- 配当の権利落ち前後に、深いイン・ザ・マネーのコールが早期行使される可能性がある
キャッシュセキュアードプット(現金確保+プット売り)
- 「この価格なら買いたい」水準を先に決めるため、取得価格の規律になる
- 担保が現金なので、権利行使に至らなければプレミアムだけが残る
- 現物を持たない段階から始められ、必要資金が行使価格×100で可視化されている
- 行使されれば、下落した株を行使価格で買い取る義務が生じる
- 現金を満期まで拘束するため、資金効率は保有株の活用より低い
- 上昇局面のリターンは株主に劣り、期間中の配当も受け取れない
| 比較項目 | カバードコール | キャッシュセキュアードプット |
|---|---|---|
| 前提となる担保 | 対象株100株(取得コスト=取得単価×100) | K×100ドルの現金を満期まで確保 |
| 最大利益 | P×100+(K−取得単価)×100 | P×100 |
| 理論上の最大損失 | (取得単価−P)×100(株価0まで) | (K−P)×100(株価0まで) |
| 割当されたときの結果 | 保有株をKドルで売却する | 株をKドルで買い取り、株主になる |
| 配当の扱い | 保有期間中は受け取れる(権利落ち前の早期行使に注意) | 受け取れない |
| 現金の拘束 | 不要(株が担保) | K×100ドルを満期まで拘束 |
| 噛み合う状況 | すでに100株を保有し、上昇余地の一部をプレミアムに替えたいとき | 保有はまだなく、指定価格での取得を待てるとき |
| 心理的な難所 | 急騰時に上限で手放す後悔に耐えられるか | 下落局面で買い取る約束を守れるか |
発注前チェックの順序(四層防御フィルター+サイズ決定)
- 第1ステップフィルター一:需給を数値で確認する
PV機関需要(ProfitVision Institutional Demand)50以上、PV相対強度(ProfitVision Relative Strength)80以上。機関需要35未満、または相対強度80未満は一票否決であり、プレミアムがいくら厚くても対象から外す。
- 第2ステップフィルター二:Economic Moat を収益性で見る
ROE 17%以上、EPS成長25%超、PV利益品質(ProfitVision Profit Quality)AまたはB。ProfitVision LAB が「護城河(Economic Moat)」を語るときの成文の判準はこの三指標である。
- 第3ステップフィルター三:売り建ての条件を満たすか
IV 30%以上、DTE 30〜45日、建玉残(OI)100以上。IVが薄い局面はプレミアムが労力に見合わず、OIが薄い限月はスプレッドの滑りで理論値が消える。
- 第4ステップフィルター四:テクニカルの位置を確認する
株価が50日移動平均線(50MA)より上、かつPV相対強度80以上。下降トレンドでのプット売りは「安く買う」ではなく「落ち続けるものを受け取る」になりやすい。
- 第5ステップサイズを5%リスクユニットで決める
契約数は感覚ではなく単位で決める。キャッシュセキュアードプットなら行使価格×100×契約数が実際に拘束される金額であり、この金額を基準にユニットを割り当てる。
- 第6ステップ割当時と撤退時の行動を先に書く
「割当されたら株主として何をするか」「想定が崩れたらどの条件で降りるか」を発注前に文章化する。損切りの哲学は、含み損が出てから考えるものではなく、注文を出す前に決めておくものである。
どう選べばよいか?
在庫と現金から逆算するのが最短である。三つの状況に整理できる。
(1)対象株を100株以上保有している場合。 カバードコールは既存の在庫と噛み合う。ここでの問いは「いくらで手放しても納得できるか」であり、行使価格はその価格帯から選ぶ。逆に、どの価格でも手放したくない銘柄でコールを売るのは、規律の設計としては矛盾である。
(2)現金があり、取得したい価格帯が決まっている場合。 キャッシュセキュアードプットが対応する。割当は失敗ではなく想定内の分岐であり、「その価格で買う」と決めた注文が約定しただけである。この覚悟が持てない価格の行使価格は、そもそも選ぶべきではない。
(3)どちらも決まっていない場合。 売り建ての限月を探す前に、銘柄選別を終わらせる段階にある。四層防御フィルターの一・二(需給と収益性)で候補が残らない銘柄は、プレミアムが厚く見えてもフィルター三の判定に進まない。
二つは循環でつながっている
キャッシュセキュアードプットで割当を受ければ株主になり、その100株は次にカバードコールの担保になる。カバードコールで行使されれば現金に戻り、再びプット売りの担保になる。つまり初心者にとっての実際の問いは「どちらを選ぶか」ではなく「いま自分は循環のどの位置にいるか」である。位置が分かれば、選べる戦略は一つに定まり、比較検討そのものが不要になる。現金の位置にいるならプット売り、株の位置にいるならコール売り——これが最も短い答えである。
常見問題
初心者はカバードコールとキャッシュセキュアードプット、どちらから始めるべきですか?
保有している資産の形で決まる。対象株を100株以上持っているならカバードコールが追加現金なしで成立する。まだ保有しておらず「この価格なら買いたい」水準があるなら、キャッシュセキュアードプットが行使価格×100ドルの現金拘束と引き換えに対応する。どちらの条件も満たさない段階なら、まず銘柄選別を終える順番である。
損益がほぼ同じなら、なぜ二つの名前があるのですか?
担保と入口が違うためである。オプション理論の一般的な関係(プット・コール・パリティ)から、同一銘柄・同一行使価格・同一満期では損益曲線はほぼ等価になるが、カバードコールの担保は現物100株、キャッシュセキュアードプットの担保は行使価格×100ドルの現金である。配当の受け取り可否、資金拘束の有無、割当後に株主になるか現金に戻るかがすべて逆になる。
割当(行使)されたらどうすればよいのですか?
割当は事故ではなく想定内の分岐であり、発注前に行動を文章化しておくのが前提である。キャッシュセキュアードプットで割当されれば行使価格で100株の株主になり、その100株は次のカバードコールの担保になる。カバードコールで行使されれば現金に戻り、再びプット売りの担保になる。
1契約にいくら必要ですか?
キャッシュセキュアードプットは行使価格×100株分の現金が目安で、行使価格50ドルなら1契約あたり5,000ドル規模(手数料は別)である。カバードコールは現物100株が担保となるため追加現金は不要だが、株の取得コスト(取得単価×100)がそのままリスク額に乗る。契約数は感覚ではなく5%リスクユニットで割り当てる。
IVが低い銘柄でも売り建てしてよいのですか?
四層防御フィルター三の条件を満たさない。同フィルターはIV 30%以上・DTE 30〜45日・建玉残(OI)100以上を求めており、IVが薄い局面のプレミアムは拘束される資金と負う義務に見合わないと判定する。OIが100未満の限月は売買スプレッドの滑りで理論上の受取額が目減りしやすい点にも注意が必要である。
